2018-02-05

悪い方へと転がって

並べれば八割以上良いことで占められているだから苦しい

悪いことだけラメ入りのボールペン使って記す自由研究

何事も悪い方へと転がってラッキーなんてまぼろしの様

蝕まれている痛みに起こされて午前二時過ぎ空を睨んだ

なんとなくお腹が痛いとりあえず鎮痛剤と共に耐えよう

ぎゅうぎゅうと掴まれている神的な何かの仕業そう思い込む

真夜中に美恵ちゃんが来て餃子焼く何の用だか知らないけども

十個ほど衝動的に飲み込んで底なし沼に飛び込んでみる

気になるね気になるからね眠るには木を切らなきゃね気が済まないね

私を喰らう鮫の正体

読書灯消した瞬間「コンニチハ」底無し闇に冷たい不安

暗闇に順応しちゃう私ってネガティブ思考検定二級

雨粒の妨害電波ラジオからノイズハモニカノイズピアニカ

音のない夜が欲しいと願うほど鮮明になる五月雨カノン

タトタトタルトタタンタン傘を弾いた甘い雨音

静寂を断罪すべく降る雨に救われた夜ヒカル葉桜

いま誰か飛び込んだでしょ? 異世界に繋がりそうなあの水たまり

暖かな場所からずっと抜け出せず(やがて刺繍の一部になった)

そうじゃない(喉に支えて)違うって(些細な齟齬に蝕まれてる)

繁華街カラーコピーの顔で行く(これで私も街の部品ね)

暗闇で孤独募らせ泣く指がそろりと撫でる液晶画面

スマートな通信機器が僕たちの関係をまた複雑にする

算数も割り切れないし人生も割り切れないし死ぬに死ねない

秒針がやたらと響く冷えた部屋カチコチココロカチコチコゴエ

駄目なんだ限界だって右足が奏で始めるモールス信号

海底に積もり積もった焦燥が私を喰らう鮫の正体

窓ひとつ金魚ここのつ僕ひとり閉塞的な夜の始まり

唇で渋滞してる言葉こそ言わなければと焦れて三キロ

絶望も致死量がある(ココロより順に機能をダウンさせます)

適当に埋めた心の空白がシクシク痛む(明日は雨だ)

辛いから詰め込まないで静かなる始発列車で出発します

仮初めの孤独と闇の中心でやたらと響く時計きちきち

苛立ちのジェンガを積んで壊してを繰り返してる(ひとりにしてよ)

この蓋は間違えている蓋だから色々溢れ落ちる(涙も)

単調な作業であればあるほどに救われなていくような錯覚

右耳に海を注いで聞こえない音を聴いたのコドウコドウ


雨音に隠した本音聞かないでそのまま雨に流して欲しい

雨雲のレーダー付きの側頭部ズキンズキンと響く警告

泣くための理由を今朝も探してた多分明日も探すのだろう

金平糖が明日降ること

雨音の数だけ募る不安とかすぐに洗って流しちゃいたい

後頭部あたりは晴れであとは雨飴雨雨が気まぐれに降る

重すぎる雲とか雨に食まれてる私は動くことができない

冴え冴えと頭は澄んでいるけれど朝から絶えず降る涙雨

ふと息を吹きかけたならしゅんわりと溶けちゃうくらい柔らかい雪

ヒンヤリと気温カタカナ硬くってチクチクします今日はツメタイ

青空を舞い踊るのは白い雪頬を突き刺す冷たい空気

恙無く雨降り続け今日もまた泣く事もなく普通に笑う

晴天の透明な風捕まえて春がないかを検査している

急激に暖かくなる雨だから多分もう直ぐ春が来ますね

唇を噛んで堪えた涙とか明日あたりに降りそうですね

雨音が町から消えて哀しみに「こんにちは」する湿った夜です

今日の空ペンキ塗りたてなんだって入道雲もなんか完璧

日傘では防ぎきれない迫力で私に迫る甘い水玉

居眠りに最適化した気温だと起きてる事が罪に思える

子守唄奏でるように雨粒は午前一時に降り続けます

青空の青が過剰に否定する金平糖が明日降ること

ひんやりと頬を撫でてく空気にはほんの少しの梅の囁き

雨だから暴力的な分量の砂糖蜂蜜とかす牛乳

恵みとは呼べない雨に濡れて立つ君を想って鬱ぐ一日

言い訳を重ねて出来た階段を転がり落ちる雨降りの午後

「さみしい」を固めた飴を舐めながら雨に打たれて冷えていきます

正午過ぎ入道雲を追いかけてポニーテールは左右に揺れる

夏に舞う蝶は孤独と決めつけて君は日傘をパタパタさせる

夕立の直後ヒヤリと静寂が肌を滑ってヒラリと消えた

雨上がり気持ちは下がり続けてる甘いものでも食べに行こうか

雲一つ無い空なのに鮮やかな夏は何処にも見当たらないね

燃える葉を鎮火していく秋微雨つめたい指で切り抜いた空

曇りのち曇りの今日は心まで曇ってしまう
炬燵に籠る

秋晴れも小春日和も何時迄も続かないから焦ってしまう

凍てついた地面はシャリリシャーベットみたいになって私を冷やす

長々と降る長雨になんとなく泣き声などを馴染ませてみる

何もかも君のせいだよ低気圧ずぶりずぶりと落ち込んでいく

唐突に雨は降りだす何時だって不意を突かれて打ちのめされる

雨音を手帳に刻むボールペン探したけれど売ってなかった

何時もより反抗的な黒髪が今日の天気を的中させた

雨が降る仕組み教えてベルシェロン冷たい雨は今日も冷たい

雨音のワルツに乗せて踊りましょ君と私の二人のプロム

三月に降る雪はもう優しくて空気を少し甘く変えるの

磨り硝子叩いた雨はもう止んで隣の街を洗いに行った

降り続く雨が心を剃るでしょう
天気予報で昨日言ってた

雨音と鼓動と後は何一つ聞こえてこない場所で待ちます

雨傘はあえて事務所に置き去りに頬で受け取る春雨のキス

青空のキリトリセンをピリピリと剥けばそこから雨が降ります

雨傘とレインブーツで武装してちょっとそこまで冒険します

曖昧な空に突き刺す雨傘の青が後ほど雨になります

壁に向かって投げている

興奮を抑えて落ち着かせるヤツばかりじゃん。と彼女が呆れた声で言う。
眠れないんだ、神経がピリピリしちゃって、三時間くらい努力しないと眠れないんだよ。だから、興奮を抑えて落ち着かせなきゃいけないの。って、カフェインがたっぷりって感じの紅茶を飲みながらスマホをいじる。
あのさ、眠りたいんならカフェインもスマホも辞めなよ。ってもっともなことを言われて、あ、うん。とか素直に返事して、紅茶を流しに捨てる。そもそも一杯ぶんのティーパックで4杯目だし、薄いし冷めてるし美味しくない液体だから惜しくもない。
珈琲党なんだけど、家では紅茶。ティーパックの紅茶が楽ちん。珈琲は本物がいい。私にとっての本物はあの店の珈琲だから、他は違うんだ。って話したら彼女は興味なさげにスマホに向かって、ふーん、って言う。多分聞いてない。いいんだ。私も聞いてない。
気がつけば会話はキャッチボールじゃなくて壁にぶつける行為に変わった。それはスマホの普及かSNSの普及か或いは両方か、とにかく、いいねと言われたいんだ。たくさんの人から。知らない人でもいいからとにかくみんなからいいねが欲しい。
いいねで満たされると思っているのだ。でも、満たされない。だって知ってるから。いいねって私、反射的に押してるからいいねって思ってないの。いや、思ってるけど、沢山ありすぎてもうなんかとりあえずいいねってなってて、だから、多分他の人もそうだって気付いてるからいいねで承認欲求は満たされなくて、枯渇したまま。
ねぇ、誰か見てよって、私を見てよって、叫びなんだけど、でもそれはそんなに重要ではないし、むしろどうでもいいと言うか面倒臭いし、邪魔臭いし、興味ないんだけど、スマホ見ちゃうしスマホ見てる彼女にスマホ見てないでちゃんと聞いてよ、とか言えなくて、興奮を抑えて落ち着かせるヤツをまとめて口に放り込んで水で流し込む。
だって、どうでもいいから。大事なのは三時間も努力しなくても眠れるようになることだから。