2019-02-24
#氷の吐息
ため息は飲み込むことにしている。幸せが逃げるからではない。逃げるような幸せなんてない。ずっと不幸せだったしこれからも不幸せなのだから、今更逃げて行く幸せなんて気にしてもしょうがない。私はただ、氷が好きなだけなのだ。つるんとした透明な氷。アレを口に含んで冷たさを感じていると私にも温もりがあったのかと安心するのだ。私はいつも不安だから安心できるならば何だって構わない。お冷に浮かぶ氷だって全て口に含んで溶かしてしまう。私は氷を溶かせるほどの温もりを有しているのだと感じたい。そうして安心したい。みっともないと言われても構わない。みっともなくなかったことなんてなかったのだからみっともなくて正解なのだ。
眠れないのか眠らないのか
失ったもののことばかり考えてしまう。それで胸がぎゅっとなって苦しい。だから考えないように努力する。すると次は手に入れていたはずだったもののことを考えてしまう。胸がぎゅっとなってやっぱり苦しくなる。だから考えないように努力する。でも、転がりだした石を止められない。ゴロゴロゴロゴロ低いところへ向かう。だから眠れない。
晴れなのに「close」
晴れなのに「close」だから喫茶店には入れない。客は出て行く一方で私はファストフード店でソフトクリームとフライドポテトを注文する。ホットコーヒーも。参考書を広げる学生の本来の目的は何なのだろう。学習塾が始まるまでの暇潰しなのだろうか。そういえば、この辺りには学習塾が三件もある。少子化なんてなんのその。本屋が潰れて学習塾ができた。教育熱心なのか何なのか。甘いしょっぱい熱い冷たい苦い。口の中が忙しい。ほんの数年前まで私も……数えてはいけない。思考を停止させて、トレーに敷かれた紙で飛行機を折ろう。
2019-02-23
#最後の今日 も雨が降る。別に何も洗い流したりはしない。
英雄どころか亜流にすらなれない僕は僕のまま、不器用だと笑われようが無能だと謗られようが僕にしては上出来だ思えるように、僕にできるほんの些細なことを積み上げていかなければならないのだ。誰にでもできることだけれど僕にしかできないことなどないのだから僕がやるのだ。僕がやらなければ他の誰かがやるだろうけれど、だからこそ僕がやるのだ。それは矜恃とか正義感とか況して自己犠牲とかそう云うものでは無くて、むしろ自己欺瞞である事を僕は自覚している。だから僕は下を向いてしまうし、受け入れるしかないのだ。
2019-02-17
オレンジ
オレンジをスライスして砂糖で煮詰めてオーブンで焼いて……部屋いっぱいに広がった甘い匂いにクラクラする。窓を開ければまだ冬の空気。でも、隣の家の梅の香りがする。甘ったるい匂いを洗うように流れ込んでくる。
「あのさ、もうバレンタイン終わったよ」
「うん、知ってる」
「なのに作るの? バレンタインはチョコを買うことすらしなかったのに?」
「うん、知ってるでしょ」
「そうだね。知ってる。君って捻くれ者なんだよね」
あははって二人で笑ってチョコレートを溶かした。
「あのさ、もうバレンタイン終わったよ」
「うん、知ってる」
「なのに作るの? バレンタインはチョコを買うことすらしなかったのに?」
「うん、知ってるでしょ」
「そうだね。知ってる。君って捻くれ者なんだよね」
あははって二人で笑ってチョコレートを溶かした。
2019-02-10
誰かがカメラを構えてる
誰かがカメラを構えてる
玄関から覗き込んでいて
急いで二階に駆け上った
窓を開けて
カメラを構えて
証拠を抑えなければ
登ってくる
壁を伝って登ってくる
窓を閉める
鍵をかける
補助錠もかける
心臓がかける
電話をかける
助けて助けて
侵入は防げない
階段を駆け下りる
安否を確認する
違和感
私の家族
おかしい
違和感
私のカゾク
オカシイ
おかしい
違和感
目を開けて
布団から出て
上着を羽織って
早鐘を打つ心臓に手を当てた
玄関から覗き込んでいて
急いで二階に駆け上った
窓を開けて
カメラを構えて
証拠を抑えなければ
登ってくる
壁を伝って登ってくる
窓を閉める
鍵をかける
補助錠もかける
心臓がかける
電話をかける
助けて助けて
侵入は防げない
階段を駆け下りる
安否を確認する
違和感
私の家族
おかしい
違和感
私のカゾク
オカシイ
おかしい
違和感
目を開けて
布団から出て
上着を羽織って
早鐘を打つ心臓に手を当てた
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