2018-02-05

壁に向かって投げている

興奮を抑えて落ち着かせるヤツばかりじゃん。と彼女が呆れた声で言う。
眠れないんだ、神経がピリピリしちゃって、三時間くらい努力しないと眠れないんだよ。だから、興奮を抑えて落ち着かせなきゃいけないの。って、カフェインがたっぷりって感じの紅茶を飲みながらスマホをいじる。
あのさ、眠りたいんならカフェインもスマホも辞めなよ。ってもっともなことを言われて、あ、うん。とか素直に返事して、紅茶を流しに捨てる。そもそも一杯ぶんのティーパックで4杯目だし、薄いし冷めてるし美味しくない液体だから惜しくもない。
珈琲党なんだけど、家では紅茶。ティーパックの紅茶が楽ちん。珈琲は本物がいい。私にとっての本物はあの店の珈琲だから、他は違うんだ。って話したら彼女は興味なさげにスマホに向かって、ふーん、って言う。多分聞いてない。いいんだ。私も聞いてない。
気がつけば会話はキャッチボールじゃなくて壁にぶつける行為に変わった。それはスマホの普及かSNSの普及か或いは両方か、とにかく、いいねと言われたいんだ。たくさんの人から。知らない人でもいいからとにかくみんなからいいねが欲しい。
いいねで満たされると思っているのだ。でも、満たされない。だって知ってるから。いいねって私、反射的に押してるからいいねって思ってないの。いや、思ってるけど、沢山ありすぎてもうなんかとりあえずいいねってなってて、だから、多分他の人もそうだって気付いてるからいいねで承認欲求は満たされなくて、枯渇したまま。
ねぇ、誰か見てよって、私を見てよって、叫びなんだけど、でもそれはそんなに重要ではないし、むしろどうでもいいと言うか面倒臭いし、邪魔臭いし、興味ないんだけど、スマホ見ちゃうしスマホ見てる彼女にスマホ見てないでちゃんと聞いてよ、とか言えなくて、興奮を抑えて落ち着かせるヤツをまとめて口に放り込んで水で流し込む。
だって、どうでもいいから。大事なのは三時間も努力しなくても眠れるようになることだから。