2016-10-15

もう少し

日菜子が最近一緒に昼食を食べてくれない。理由は大体察しがつくのだけれど、日菜子の口から聞きたい。それまで待ちたい。私からぐいぐい尋ねてみるのもいいけれど、きっと日菜子は意固地になって余計に口を固くするだろう。だから静観しているのだけれど、学食の私の死角になる位置で彼とイチャイチャするのは……なんというか……死角になっていると本人たちは思っているのだろうけれど、がっつり見えている。それはもう、がっつり見えている。隠れてない。隠しているんなら別いいいよ。彼氏いない私に対する最大限の配慮だって分かってるし、私、気づかないふりするよ。でもさ、もう少し……なんというか、もう少し何かなかったのだろうか……親友の恋が成就した。喜ばしいことではないか。素晴らしい。私は手放しで支持するよ。すごく祝福するよ。もしかして、隠してるのって……いや、やめよう。今日の日替わり定食は私の好物である唐揚げ。唐揚げに集中しよう。私に彼氏ができたことを全力で隠しているにもかかわらず、全然隠せていない親友とその彼氏の浮かれた姿は見えない。見ていない。そんなものは存在しない。そう。私の親友は今、自習室で課題と向き合っている。日菜子がそう言っていたんだ。親友の言葉を信じよう。そう。私は親友を信じる……信じるぞ……信じ……あー、無理! 嘘下手かよ!