2017-03-21

#春雨のスキップ

「今日、雨だから人が少ないんです」
ホワイトモカが出来上がると人好きのする笑顔で店員が言った。
「そうですね。いつも沢山居るから驚きました」と笑いながらホワイトモカとパンを受けとり、がらんどうとした店内の隅の席で雨を眺める。春の雨は激しさを増し、アスファルトを凍えさせる。春の陽気なんてまだまだ先の事に思えるが、近所の梅の花はもう散ってしまっていた。春はすぐそこまで迫っているというのに、ホットが丁度いい。甘ったるいホワイトモカを飲みながら思った。
子どもが水溜まりを選んでスキップする。母親が甲高い声を上げた。逆効果だ。母親が怒れば怒るほどに子どもははしゃぐ。私もそうだった。水溜まりにダイブしてはしゃぎ回ったあの雨の日を思い出す。母の気を引きたくて夢中になって水をはねあげさせた。そんなこと、する必要はなかったのに。お母さん、と言うだけで振り向いてくるたのに。どうしてあんなことをしたのだろうか。どうして、水溜まりにダイブしなければ母が振り向いてくれないと思い込んでいたのだろうか。
これを飲み終わったら、母に電話をしよう。