2020-08-12

哀しい時に泣けないと

哀しい時に泣けないと哀しみが尾を引く
もう関係のない人たちの記憶に何度も何度も締め付けられる
もう終わったことなのに
楽しかった思い出はどんどん色褪せて
苦しい記憶が色を増す
もうあの人たちは私を覚えていない
私も記憶が曖昧でもうほとんど思い出せないのに
苦しい
苦しいって感覚だけは生々しく覚えていて喉の奥を締め上げる
哀しみは苦しみになって私の時間は止まったままなのにあの人はきっと前に進んでて
不公平だなんて思う気力もなくて
恨むにも体力が必要なのですね

2020-05-04

手放したワタシ

仕事用の鞄を処分した
お気に入りの鞄
ずっと大事に使いたかった鞄
手頃なサイズでとても使い勝手が良かったけれど
私にはもう必要ないものだから
手放した
私は何者にもなれなかった
私は無くしてしまった
私は必要としなくなった
だから必要のない鞄を手放した
物を整理して
過去を手放して
それでも脳を駆け巡るのは
傷を深める記憶だけ

2020-04-07

暇だとろくなことを考えない

もう連絡はない
もう仲間じゃないから
私は救われない

私が失ったものを彼女は持っている
私が得ようとしたものを彼女は持っている
私が欲したものに彼女は興味がない
彼女は知らない
だから私は蝕まれる
この紙切れを私も持っていた
全部処分されてしまったけれど
そうだ
処分されてしまったのだ
跡は残ったけれど

できない
身体が、気持ちが、拒絶する
できない
できそうだと思ったけれど駄目なのだ
駄目なのだ
彼女は知らない
説明できるような感情ではないから
私は堪える
堪えるより他にやる事もないのだから

2020-01-31

午前二時を彷徨って

タマゴがヒヨコになって
ヒヨコがニワトリになって
ニワトリがタマゴになって
タマゴがキョウリュウになる
単純なパズルで午前二時を漂うと
雨降りの窓の外から鮫が覗くよ
湿ってひんやりとした空気が部屋に満ちたら
つるりと鮫が入ってくるよ
心配しないで
鮫は私を食べなしい
鮫はあなたに気づかない
ぐるりぐるりと部屋を泳いで不安にさせるだけ
まぁ
一番怖いのは不安なんだけどね

行こう

誰もいない場所へ行こう
この世にまだあるのなら
常識もない場所へ行こう
この世にもうなくたって
未開の地へ行こう

そんな場所ないって
解ってる
それでも行きたいんだ

誰もいない場所へ
常識もまだない場所へ
この世にもうないならあの世になんて言わないけれど
ここではない何処かへ行きたい
なのにここに留まるのは
結局ここが一番快適だからなのだろう

2020-01-24

私はこれをビスコッティと呼ぶ

起きられないし眠れない。だからビスコッティを焼く。ナッツがないが致し方ない。そもそも、ナッツが無ければならないと思い込んでいるだけで別に必要ないのかもしれない。私はちゃんとしたレシピを知らないのだ。ビスコッティとは二回焼くという意味らしい。とにかく二回焼いてしまえば何が入っていようがビスコッティと呼ぼう。私一人だけでもビスコッティと呼ぼう。
卵、オリーブオイル、牛乳、薄力粉、ベーキングパウダーをよく混ぜてクッキングシートを敷いた天板の上で楕円形に広げる。歪な形でも構わない。百八十度に予熱したオーブンで二十分焼いたら適当にカットして百五十度で更に二十分焼く。
あっという間にできてしまうので、あっという間に手持ち無沙汰になってしまった。かといってこれ以上凝った料理をする気にもなれない。分量も一応計るが適当だ。
オリーブオイルと牛乳だいたい大匙三くらい。大匙三まで計る事ができる100円の計量カップは私の救世主だ。薄力粉はだいたい百五十グラム。粉は袋からダイレクトにどさっと入れるのでだいたいオーバーする。ベーキングパウダーは個包装のものを使うので五グラムの時もあれば三グラムの時もある。
お菓子作りは軽量が命だと言うが、そんな事はない。分量が適当でも、よく火を通せば何とかなる。思ったものと違ったら、新しい名前をつけてやればいい。
あれ、もしかして、砂糖を入れ忘れている?
まぁ、良いか。